公益法人にメスを入れるには、国税庁が最高の適任者
公益法人の問題は、たとえばこんなものもある。電気技術者試験センターという財団法人が、有楽町にある。ここでは五つぐらいの試験を販売しているが、天下りの理事長と専務理事がいて、ほかに社員が二四人いる。それで年間の売り1げが二六億円だから、一人一億円の売り上げである。これは大変な数字で、いまそれがたまった内部留保金は三〇億円ぐらいになっている。奇妙なのは、有楽町に電気技術者試験センターがある一方で、新橋には電気工事技術講習センターがある。こちらでは何をやっているかというと、更新時の講習を販売している。

公益法人は、法人税法第四条によって原則非課税、ただし第七条で収益事業については課税の対象とする、とした。これは民間企業が行なう事業と競合関係にある事業に対し、課税の公平制や中立の観点から課税が必要という考え方である。では納税義務がある収益事業とは何かだが、物品販売業、請負業など全部で三三項目が、政令によって規定されている。ここに当てはまらなければ非収益事業となるのだが、実際には区分けが曖昧で、そこにさまざまな問題が潜んでいる。もうひとつの問題は、税が課される場合についても、その適用税率が二二パーセントという軽減税率になっていることである。これは普通法人の基本税率三〇パーセントと比較して、かなり低い数字である。さらに寄付金にかかわる特例ということで、収益事業で得た収入の二〇パーセントを非収益事業部門に移すことが認められている。「みなし寄付金」 と呼ばれるもので、これによって公益法人の収益事業収入は、二〇パーセントが損金となって逃げていくことになる。このようにいろいろな逃げ道があるのだが、とくに重要なのは、最初に述べた収益事業の問題である。三三業種の中に当てはまらなければ収益事業ではないとすると、課税ベースが非常に限定されてしまう。そもそも本体の活動が課税されないうえ、収益事業収入の二〇パーセントも本体へ逃げる。そのうえ別の活動についても、「三三項目に当たらないから、これも本体活動である」と逃げられやすいのである。非課彗業の基準の曖昧さが、法人の逃げ道をつくっている。

しかも収益事業については昭和二十五年度におよそ定められ、芸後、昭和三十二年度から五十九年度まで八回にわたっていくつか追加され三三業種となり、それ以後はいっさい追加されていない。
昭和五十九年といえば、いまから二十年近く前である。孟後、世の中は変化して新しい業種もどんどん生まれているのに、それらについての追加はなされていない。では追加されていない事業について、国税庁ではどのように処理しているかというと、これが非常に曖昧である。たとえば公益法人が行なっている事業の中に、資格や試験、認定、講習、免許などに関するものがある。これらは国の法律に基づいて行なっている場合もあれば、号でない場合もあるが、いずれも試験を販売したり、認定を販売するという商売である。その販売によって、かなり利益を上げている。これらの事業が三三業種のどこに入るかというと、基本的に請負業(一〇番目)であるというのが、国税庁判断。

請負業の解釈がわかりにくく、三三業種の三十番目には洋裁教室や和裁教室・自動車運転の講習などが挙げられており、同時にそれらに関係する試験も入っている。となると一〇番目と三〇番目の境界は極めて曖昧だといえるのである。
 また資格試験の中には、政府などから委託されていないものもある。その場合どうなるかというと、これは法人税基本通達で示されている。先の三三業種は施行令の第五条に挙げているものだが、この施行令の下に大臣から出される省令があり、さらに下にあるのが基本通達である。この通達の一五の一の二七、一五の一の二八、一五の一の二九の中で、どのような事業が請負業に入るか、その判断の基準が事細かに善かれている。たとえば試験や資格、認定といった事業で請負でない場合、それは残りの三二業種になり、その三二業種にいちいち当てはめてみて、そこにも当てはまらない場合は非課税事業となる。そのようなニュアンスで書かれている。これでは非課税事業がいくらでも増やせるわけで、課税ベースがどんどん限定されてしまう。現在の税制は、公益法人にとって非常に都合のいいものになっているのである。 この是正を法律改正というレベルで行なうと、国会を通過しなければならず、いろいろな問題が出てくるだろう。だが政令通達であれば、各省庁間の壁があるにしても、比較的簡単に出せる。そこで国税庁の仕事をしやすくする仕組みを、行政指導的に後押しして行けばよい。公益法人の税制の問題は、非常にわかりにくい部分が多い。それは実態が明らかになっていないために、何が問題であるかがはっきりしないからだ。それによって国税の現場もかなり混乱しているようである。これをすっきりしたものにするためにも、とりあえずすぐに可能な通達レベルから変えていく必要がある。